Rosen Maiden二次創作
(タイトルは続き書くことになったら考えます)
「これを着ることになるってのが、結構信じられないんだけど」
『桜田』と、自分の名前の入った名札がついている中学校の制服をしげしげと眺めながら、細面のメガネの少年、桜田ジュンは誰に言うともなくそうつぶやいた。
勉強机の上にパソコン、本棚の上にも部屋の片隅にも転がっている怪しげな人形やぬいぐるみ。
ジュンが自分の部屋に引きこもっていた間、通信販売で怪しいオカルトグッズを買ってはクーリングオフを繰り返すという、実に生産性のない趣味のたまものである。
その部屋の片隅にかけてある、真新しい制服を見てつぶやいたジュンの言葉に反応するものがあった。
「いいんじゃなくて? 似合うと思うわ」
「……はぁ?」
ベッドの上には全長が数10センチのビスクドールがちょこんと座っていた。
二つに束ねて結い上げられた金髪に蒼い瞳。
紅を基調としたロリータ風のドレス。
実に精巧にできたドールだが、普通のドールは返事をするどころかしゃべったりはしない。
『彼女』は、特別製なのだ。
「なんか、お前にほめられても素直に喜べないんだけど、真紅」
「それはジュンが素直じゃないから」
「なんだよそれ」
「ジュンにはもっと素直な家来になってほしいという話よ」
「だから僕はお前の家来なんかじゃ……はぐっ」
ベッドの上から降りてジュンの隣までとことこと歩み寄り、思いっきりすねを蹴飛ばしたそのドールこそ、ゼンマイ仕掛けの考える人形、アリスゲームのプレイヤー、ローゼンメイデンの第5ドール、名を真紅という。
ローゼンメイデン、と呼ばれるドールは伝説の存在だ。ぜんまいを巻けば目覚め、自分で動き、考え、しゃべり、話し、食べ、怒り、泣く。
まるで人間のようだが、彼女たちは人形でしかない。十全足る力を発揮するためにはミーディアムと呼ばれる存在が不可欠なのだ。
ドールが持つ力の源、ローザ・ミスティカを守るべく契約を結び下僕とする……とのことだが、巻き込まれたジュンは到底そんなことには納得できていない。
それでも、真紅の姉妹であるドール、水銀燈との闘いを通じ、自分の心のあり方、他人の心との触れ合い方を学んだジュンは、真紅が大切な存在であることは自覚していた。
まぁ、自覚していようとも蹴られたすねは痛い。
悶絶してうずくまるジュンの目線で、真紅はそんな状況にはまったく頓着しない様子でこういった。
「ジュン、お茶が飲みたいわ。私を下まで連れて行って頂戴」
「真紅ぅぅ〜、お前、僕が今どうなっているかわかっていってるのかそれ……」
「早くしなさい、愚図な家来は嫌いよ」
何様だお前。
という表情をありありと浮かべながら、ジュンはそれでもなんとか立ち上がり、部屋のドアを開けようとする。
が、そのジュンのシャツのすそが何かに引っかかるように引っ張られる。
振り向いて見てみると、
「……なにやってんだよ?」
真紅がジュンのシャツを引っ張っていた。
「ジュン」
「なんだよ?」
「抱っこして」
はぁ?
納得できない顔で真紅を見やったジュンは、その口調で巧みに覆い隠しているものの当の真紅の頬にごくわずかに朱が入っているのに気づき、どきんと胸が大きく一つ打ったのを感じた。
いや、ちょっと待て。僕は別に真紅のことがどーとかこーとかそんな事を考えたりはしなくって、というかこんな人形のことをそんな風に思ってるのってはっきり言って変態じゃないのかってそんな事ってどんなことだよ説明してみろよ50文字以内でって何をどう説明すりゃいいんだおいいったいっ!!
「……何をしているの、ジュン?」
「うわあぉう!?」
あたふたしているうちにふと耳元で真紅の声が聞こえて、ジュンは心底びっくりした。抱き上げていた真紅を取り落としそうになるが、何とか落下事故だけは免れた。
「というか、僕はいつの間に真紅を抱き上げていたんだ?」
「反応がないからよじ登ったの」
「おい……」
「さぁ、下に連れて行って頂戴」
「……話を聞けよ……」
……さて、この続きどうしようかな。